弁護士 山田大仁
介護施設職員が介護施設の利用者...

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介護施設職員が介護施設の利用者・入居者に怪我を負わされた場合の事業者の対応

介護施設では、身体的精神的な変化もあり、入居者が職員介護施設職員に対して予期しない行動を取ることがあります。その結果、職員が負傷する事故が起こることも珍しくありません。このような事故が発生した際、施設の運営・職員の雇用を行っている事業者はどのような対応を取るべきでしょうか。

適切な初期対応から法的責任に関することまで、事業者が知っておきたい重要なポイントをここで解説いたします。

事業者が負う責任

介護施設の事業者は、職員の安全を確保するための法的責任を負っています。労働契約法第5条に定める安全配慮義務に従い、職員が安全かつ健康に働ける職場環境を提供しなければなりません。

(労働者の安全への配慮)
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用:e-Gov法令検索 労働契約法第5条

安全配慮義務には、単に事件・事故が起きた後の対応だけでなく、事件・事故を未然に防ぐための予防措置も含まれます。具体的には、危険な状況を予測し、適切な人員配置や設備の整備、職員への教育訓練などを実施することが求められます。

もし、事業者が安全配慮義務を怠ったと認定されてしまうと、職員に対して損害賠償責任を負う可能性もあるのです。また、事件・事故の内容や経緯によっては、施設の運営体制そのものが問題視され、行政処分の対象となるリスクやリピテーションリスクも存在します。

負傷したときの対応方法

職員が入居者により負傷等した場合、事業者は迅速かつ適切な対応を取りましょう。初期対応、そしてその後の適切な手続きが職員の救済につながりますし、事業者の法的責任の有無・軽重にも関わってきます。

事件・事故発生時にまず優先すべきは、負傷した職員の安全確保と応急処置です。必要に応じて救急車を呼ぶなどして適切な治療を受けさせましょう。

続いて速やかに労働基準監督署へ報告し、労災保険の適用に向けての手続きにも取り掛かります。負傷した職員には労災保険給付の申請について案内を行いましょう。

なお、介護業務中の入居者による攻撃的な行動で負傷したのなら一般的に労災として認定される可能性は高いといえますが、絶対ではありません。事件・事故の具体的な状況や職員の行動によっては認定が難しいケースもあるため、正確な事実関係を把握することに努めましょう。

再発防止に向けた取り組みも重要

事件・事故への対応と並んで重要なのが、再発防止に向けた取り組みです。今後同じような事例が起こらないよう、将来的な介護職員の募集等に支障が生じないよう、組織全体で改善に向けて動くことが大切です。

そのためにも、事件・事故がなぜ起こったのかを考え、個人的な要因だけでなくシステム的な問題点を特定しましょう。利用者・入所者・親族との関係は複雑多岐にわたりますし、物的人的資源には限りもあるため、簡単なことではありませんが、たとえば施設の物理的環境、人員配置、教育体制、コミュニケーション体制など、さまざまな視点から改善点を探し出します。

どのように取り組めば良いのか、どう改善していけば良いのか、取り組み方で悩むときは内部だけで解決しようとせず、専門家の活用(社会福祉労務士や介護福祉士の方が中心的に活躍されていると思いますが、例えば弁護士であれば利用規約や重要事項説明、緊急時マニュアルについての助言が可能です)もご検討ください。

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