弁護士 山田大仁
医療過誤で家族が亡くなった場合...

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医療過誤で家族が亡くなった場合の損害賠償請求─家族にも請求権はある?

医療過誤により被害を受けた方は医療機関に対して損害賠償請求を行うことができます。しかし死亡事故である場合は本人が直接請求できないため、遺族による請求権の有無が問題となります。

家族でも損害賠償請求できる

医療過誤で亡くなった方の遺族は損害賠償請求を行うことができます。
大前提として「医療過誤」「による」「死去」の場合ですので、次の3要件は満たしていなければならず、心中お辛いことと思いますが、家族が病院等で亡くなったという一事のみで、損害賠償請求ができるわけではありません。

要件 内容
医療機関や医師による過失 臨床医療現場等における必要な注意義務を起こったこと、またはその時点での医療資源・医療水準から見てを踏まえ誤った判断診断や処置を行ったことなど等。
損害が発生したこと 誤った診断や処置等により患者が亡くなってしまったこと死亡や後遺症、治療費の発生など、金銭で評価可能な被害が生じていること。裏返せば、救命可能性や延命可能性があったこと。
過失と損害の因果関係 医師や病院の過失が直接の原因となり、死亡などの損害が発生したこと。前述の救命可能性や延命可能性とも関係します。他の処置等がありえたからといって、当該処置等によっても亡くなってしまっていた可能性が高ければ、因果関係が否定されることになりえます。

これらの要件を満たしたうえで、亡くなった方と一定の血縁関係にある場合には損害賠償請求権を持つことがあります。

近親者固有の請求権が認められる

民法第711条にて、「生命を害された者の父母・配偶者・子」は被害者本人の請求権とは別に固有の請求権を持つと定めてあります。
相当期間同居している等として社会一般的・心情的に「家族」といえる場合でもこの定義に当てはまらなければ固有の請求権を持ちません。反対に、別居していたり疎遠であったりしてもこの範囲内の方なら理論上は請求が可能です。

なお、このルールは医療過誤に限ったものではなく、たとえば交通事故で家族が亡くなったときにも適用されます。

亡くなった本人の請求権も相続できる

人が死亡すると、その方の持っていた権利は、遺言書がない限り、法定相続人へと引き継がれます。医療過誤に基づく損害賠償請求権も同様で、亡くなった方の相続人であればその請求権を相続し、法定相続分に応じて行使することができます。

ただし法定相続人の範囲は法律が定めており、「家族」かどうかという曖昧な指標ではなく、血縁関係・法的な親族関係に基づいて判断されます。

※相続人になれるのは、①配偶者と子、または②配偶者と直系尊属(父母などの直系尊属は子がいないときに相続できる)、もしくは③配偶者と兄弟姉妹(兄弟姉妹は子や直系尊属がいないときに相続できる)となります。

家族が請求できる主な損害内容

医療過誤で家族を亡くした方が請求できるのは、次のような損害内容です。

  • 治療費・・・医療過誤により生じた部分の治療費。医療過誤前からあった疾患や怪我の部分と理論上は区別されます。
  • 葬儀費用・・・葬儀や埋葬に要した相当額。医療過誤でなくても、人はいつか必ず亡くなってしまいますが、医療過誤によって「死」が現実化してしまったので、一定額についての葬儀費用が賠償対象となります。
  • 逸失利益・・・被害者が将来得られたはずの収入相当分。基礎収入や年金・年齢をもとに算定しますが、若年者ほど高額となり高齢者は低額となりやすい賠償項目です。将来収入は生活にも費消していたはずだ、という考え方で生活費控除率30~50%程度が減じられます。
  • 休業損害・・・死亡前の就労不能期間に応じた収入減。但し、亡くなってしまわれるほどの医療過誤の場合、急激に状態が悪化する(急死してしまう)ことが多いため、休業損害ではなく逸失利益による算定になることがほとんどです。
  • 死亡慰謝料・・・被害者本人の精神的苦痛に対する賠償請求権、および配偶者や子などが受けた精神的苦痛に対する賠償請求権。亡くなった被害者と遺族とで、それぞれ個別に観念されるのですが、総額と割付によって調整をはかっているような裁判例が相当数あります。

このように、医療過誤による亡くなってしまった場合、患者の遺族が損害賠償請求をすることができます。ただし、前述の3要件を裏付ける証拠(カルテや医療機関の説明を録音したもの等)の事前準備は必須です。

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