弁護士 山田大仁
医療過誤の不法行為に関する損害...

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2024.08.28

医療過誤の不法行為に関する損害賠償請求権は何年で時効になるの?

医師・看護師等の医療従事者の過失によって患者が死亡したり、後遺症を負ったりするなどの損害を被った場合(医療過誤)には、被害者本人などの被害者側の当事者は、医療従事者等に対して損害賠償請求等の責任追及をすることが可能です。
もっとも、医療過誤の事案においては、医療過誤に関する証拠は医療機関側に多く存在しており、その証拠収集に時間がかかることが多いです。
そのため、証拠収集に時間を要している間に損害賠償請求権の消滅時効が到来してしまって、医療機関等の責任追及が不可能になるということもあり得ます。
本稿では、医療過誤の不法行為に関する損害賠償請求権は何年で時効になるのかについて解説いたします。

医療過誤の不法行為に関する損害賠償請求権の消滅時効

医療過誤が生じた場合には、被害患者の方の生命や身体に対して損害が発生しています。
そのため、医療過誤の不法行為に関する損害賠償請求権の消滅時効に関する根拠規定としては、民法724条、724条の2が挙げられます。
両規定は、以下のように規定しています。

■724条

 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

■724条の2

 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

以上の両規定から、医療過誤の不法行為に関する損害賠償請求権は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないとき」、又は「不法行為の時から20年間行使しないとき」に消滅します。
一般に、医療過誤の事案における「損害及び加害者を知った時」の判断は、医療過誤について十分に検討することができる期間を経過した時点で判断されます。
これは、医療過誤事件の被害患者は医学的知識に乏しいため、医療過誤による損害発生を認識しただけでは、それがどのような医療過誤によって生じたのかという点について詳細に知ることが困難であるからです。
もっとも、被害患者側の当事者の個別事情によって「損害及び加害者を知った時」の判断が異なるため、この点について弁護士等の専門家に相談することが重要です。

消滅時効期間が間近に迫っている際の対応策

医療過誤による損害が発生してからある程度期間が経過してしまっているという場合には、不法行為に基づく損害賠償請求権が消滅しないように対応策を取る必要があります。
被害患者側の当事者が採ることのできる対応策としては、以下のようなものがあります。

①内容証明郵便等を利用して医療機関側に対して催告をする
②医療機関側と損害賠償請求権についての協議を行う旨の合意を書面で行う
③医療過誤に関して不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起する
④損害賠償債務を負うことについて医療機関側の承認を証拠として残る形で獲得する

上記①ないし③の場合は、各手段を講じた時から法定の期間時効の完成が猶予されます(法定の期間は消滅時効が完成しない)。
また、上記④の場合は、承認をした時から従前の消滅時効期間がリセットされ、新たに消滅時効期間が進行することになります。
また、上記③の場合でも、被害患者側が勝訴した場合や和解が成立した場合には、上記④の場合と同様に、その時点から新たな消滅時効期間が経過することになります。
医療機関側が医療過誤を認めないような場合には、上記①や③の手段を講じることになります。

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