介護施設で虐待の疑いがある場合に家族が行うべきこととは?
介護施設に預けた家族の身体や言動に不自然な点を見つけた際、虐待ではないかと不安を覚える方は一定数おられます。
しかし、ADLが低下し、皮膚や骨が弱っている高齢の入所者は、各自の日常動作で小さな怪我をしたりアザが出来てしまったりすることも少なくありません。
また、認知症等の診断はされていなくても、認知・記憶・表現の各種能力が以前より弱っている方もいます。
ですから、被害を受けていると決めつけたり、準備なく施設側を問い詰めたりすると、双方の関係を徒に悪化させるだけになってしまいます。
昨今では、カスハラという概念も広まっており、家族のためという気持ちで、施設と過度のトラブルになってしまうと、結局施設を退所するということにもなりかねません。
ですから、施設との関係を無用に悪化させず、他方で虐待がないのかどうか慎重に確認・調査をする必要があります。
本記事では、介護施設で虐待の不安を感じた場合に家族が行うべきことについて解説します。
介護施設で虐待が疑われる場合に家族が行うべきこと
介護施設での虐待の不安をもった場合、施設を感情的に糾弾したり、監督官庁に駆け込んだりといった極端な対応はせず、以下の点をご参考の上で、慎重かつ冷静に状況判断・方法選択をすることが重要です。
客観的な資料を集める
介護施設で虐待がされていると不安を感じた場合、その不安が自身の思い込みや誤解ではないことを事後的に第三者にも理解してもらえるよう、客観的な資料の収集が必要となります。
身体的な異変やアザなどを発見した際は、日付がわかる状態で写真を撮影しましょう。
医師の診断書は必須ではありませんが、入所されているご家族が痛み等を訴えるのであれば、施設の主治医でかまいませんので、受診をさせてください(医師は複数の施設と連携した外部の独立の専門家ですので施設の意を汲んで隠蔽するのではetcと疑心暗鬼になり過ぎないでください)。
また、暴言などの心理的虐待が疑われる場合は、体調やメンタルの変動から推測するには限界がありますので(服薬等によって日々のコンディションも大きく異なりますので)、他の入所者のプライバシーを侵害しない方法で(入所者の居室に限定する等して)、ICレコーダー等を用いた秘密録音をせざるを得ない場合もあります。
なお、入所者間のトラブルの防止・介入等の必要性から、施設職員が入所者を指導等せざるを得ないことがありますが、暴行や人格否定といった行き過ぎた言動に至らない限り、それが身体的・心理的な虐待に当たることはありません。
市区町村の窓口や地域包括支援センターへ通報する
自身の思い込みや誤解ではないといえるだけの資料が揃ったら、外部の公的機関(市区町村の高齢者福祉担当窓口や地域包括支援センター等)に相談してみてください。
これらの機関は、高齢者虐待防止法に基づき事実確認や指導を行う権限を有します。
入所者家族と施設が直接応答するよりも、客観的資料に基づいて行政に関与・介入を求めることで、感情的軋轢を緩和し、不適切な対応を抑止し、事態の早期改善を図ることにつながります。
本人の判断能力によって異なる家族の対応
入所者本人の認知能力の程度によって、被害の有無・被害の確認方法・立証方法や法的手続選択etcが異なります。
判断能力が保たれている場合
本人の判断能力が十分な場合には、証言・供述が被害を立証する証拠になります。
いつ誰からどのような言動を受けたのかを、日時・場所・言動・状況etcを詳細に記録しておきましょう。
なお、入所者本人の意向は、よく確認してください。
単に、親しい人に愚痴をきいてもらいたい、愚痴をきいてもらう上で自身には非がなかったことを強調してしまった等ということは、高齢者に限らずよくあることです。
入所者本人の意向を無視し、家族が大事にしたことで、かえって入所者本人のためにならないということがありえます。
なにが事実で、なにが本人にとってより良い選択なのか、一緒に考えることが重要であり、職員や施設を敵視することだけが解決方法ではありません。
認知症などで判断能力が不十分な場合
認知症などで本人の認知能力が不十分な場合、被害を訴えていても証言・供述の信用性が認められにくいことがあります。
ご本人の人生歴・性格・周囲との関係etcによるため、一概には言えませんが、ご家族として、例え認知症であっても、そのようなことを誤認して訴えることがありえるかどうか、難しいところですが、親族として少し距離をとりつつ、冷静に考える必要があります。
いずれにしても、本人の発言のみに頼らず、本人の発言を裏付ける怪我や状況が存在したのか、慎重に確認する姿勢が大切です。
なお、認知症の入所者の場合、施設側との示談交渉や損害賠償請求、入退所契約の解除といった法的手続きを進める際、成年後見人の選任手続きを並行して検討する必要があります。
まとめ
介護施設での虐待に不安を感じた場合、感情的に施設を問い詰めるのではなく、まずは傾聴し、写真などの客観的資料を確認・保全し、行政へ相談し必要であれば介入を求める、といった正しい順序で冷静に行動することが重要です。
また、本人の認知能力に応じた適切な対応を取ることも求められます。
虐待かどうか不安があるが、証拠や供述に曖昧さがあるというような場合、ADRや調停といった仲裁の場を設けることも一つの方法です。